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プロフィール

高田 実(たかだ みのる)

農業ひとすじ。高校卒業後、生産から販売、流通まで、農園業の様々な仕事に携わる。
その経験を活かし、平成8年、篠ファーム設立。外来種野菜のプロデュースや、唐辛子の生産、限界集落問題の緩和事業など、
ユニークなアイディアで、日本の農家の地位向上を図っている。

 

日本の農業に必要なのは、「脳業」だ!

京都の町並みから少しはずれ、青々とした田んぼが広がる町、京都府・亀岡。ここでは、九条ねぎや万願寺とうがらしといった、「京野菜」と呼ばれる京都の伝統野菜が多く栽培されています。今回、私が取材したのは、亀岡から「京の新野菜」を発信している、有限会社 篠ファーム。


社長の高田さんに案内していただいた加工場の中では、沢山の野菜たちが出荷を待っていました。黒・黄・オレンジに輝く「ベリートマト」や、紫の縞模様が目を引く茄子「スティックテイスト」、そして色とりどりの唐辛子。野菜ごとに工夫されたパッケージに包装された野菜たちは、ひとつひとつが輝き、まるで宝石のようです。これらの野菜は全て、日本で栽培されてなかった外来種。高田さんが種を買い付けて育て、そして名づけ親になりました。「商品は作り方だけではなく、見せ方と売り方を工夫すればオンリーワンになる。僕がやってるのは、考える農業。つまり、脳業なんです」と語る高田さん。篠ファームが実践している「脳業」とはいったい何なのか?お話を伺ってきました。

おいしさや見た目だけじゃない。「五感に訴える野菜」とは?

京都にある府立高校の園芸科を卒業した高田さんは、園芸の仕事を転々とする中で、輸入、卸、販売、流通など、野菜や花が、生産者から消費者に届くまでの工程をほぼ経験。「この世界のことは、いいところ・悪いところ含めて色々見てきました。農家が儲からないって言われるのは、最初に売り先を決めず野菜を作り、売れなくなったら商品の値段を下げる。さらに、卸・流通の中間マージンが引かれる。すると、生産者に残るお金は、ほんのわずかです。そういう構造が生産者を苦しめているという現実を、目の当たりにする機会が沢山ありました。このような経験の中で僕が思ったのは、日本の農業には、農産物をマーチャンダイジング、つまりニーズに沿った商品計画をする力がない、ということ。


それは園芸の世界に従事していた高田さんならではの発想でした。「お花だったらね、プレゼントのときはブーケ作ったり、綺麗にリボンをかけたりとか、いうたらお化粧をして売るでしょ?きっと野菜も一緒やなって思ったんです。野菜だってきちんとお化粧してあげたら、ちゃんとした値段が付くはずやって」。おいしさや見た目はもちろん、ネーミングや包装のデザインで野菜を魅せる。買う人の五感に訴えるような野菜を商品化したら売れる。そう確信した高田さんは、勤めていた会社を辞め、起業。43歳のときでした。

 

農家の未来を救う、オンリーワンの京野菜。

自分でやるからには、他にはない、オンリーワンの商売をしたい。安心、安全にこだわって、なおかつ嗜好性の高い商品を提供したい。そこで高田さんが目をつけたのが、唐辛子を初めとした、日本で栽培されていない外来種の野菜でした。「まず外来種って言うのは、知名度がない上に、栽培方法も分からず、どのように食べられるのか分からなかった。前例のないものを広めるっていうのは難しい。でも、どうやったらこれが売れるかっていうのを、考えて考えて…。そしてあるとき、そうや、京都には京野菜がある。京都で作ったこの外来種の野菜たちを新しい京野菜としてプロデュースして、全国に広めていくのはどうやろう、と閃いたんです。そうすれば、伝統も守りながら、地域の価値も上げることが出来るって」。


高田さんは、そのアイディアをコンテストに提出。京都商工会議所から地域貢献も兼ねたビジネスモデルであるとお墨付きをもらいました。行政からの信頼を得た篠ファームの新野菜たちは、それをきっかけに、メディアで取り上げられる機会も増え、一気に販路も広がっていったといいます。


「今は200軒ほどの農家と契約しています。契約は全部出来高制で。出来たら出来た分を、最初に決めたキロ当たりの値段で、全部うちが買い上げるようにしています。そうすれば、農家さんは、出来すぎても、豊作貧乏にならず、むしろ高収入を得られることで、生産意欲も上がる。どう売るかは、僕の専門やから任せてくれたら、それでええ。生産者との信頼関係、人と人とのつながりが一番大事なんや」と高田さんは微笑みました。例えば、激辛でそのままでは商品として売り出せないハバネロも、加工品にすれば消費者から支持される商品を作ることが出来る。この発想から生まれたのが、篠ファームオリジナルのハバネロソース「篠ソース」や、お菓子屋さんとコラボし、好評を得ている、ハバネロフィナンシェ。「むやみに値段を下げなくても、売り方や魅せ方をキチンと計画すれば、お客さんは食いついてくれる。そしてそれが、農家の人の生活を守ることにつながって行くんです」。

限界集落から世界へ、野菜を通じて人の優しさを伝えていく。

 篠ファームがもうひとつ力を入れているのは、「ふるさと野菜おすそわけ」事業。限界集落と呼ばれる、人口の半数以上が高齢者で構成された、社会的生活を維持することが難しいとされる地域を活性化するために、高田さんが作った新しい仕掛けです。


「限界集落に住むお年寄りって、自分たちが食べる分くらいの野菜を作っているんですよ。そこの間に篠ファームが入って、都市部の会員さんに宅配する仕組みを作りました。『おすそわけ』っていうよりも、田舎から届く仕送りのみかん箱のイメージですね。だから、中身は指定できません。初めは理解してもらうのが大変でしたが、いざはじめてみると、今まで引きこもりがちだったおじいちゃんやおばあちゃんが、外に出ていって、いきいきしているのがわかるんです。ダンボールの中には、孫に送るような手紙を書いて、野菜に添えてもらっています。会員の皆さんには、限界集落にすむお年寄りが作った野菜を購入することで、自分の知らない場所に親戚が出来るように感じてもらえればいいなぁって」。病気にかかり野菜が送れなくなってしまったおばあちゃんを、会員さんがお見舞いに行った。おばあちゃんの野菜で子どもの好き嫌いがなくなった。など、野菜を通じた心のふれあいは、確かに広がっているようです。


「最近、大企業が社会貢献でこんなことしてます、ってわざわざ紹介したりするけれど、僕からしたら、ビジネスと社会貢献は一緒にやってナンボやと思います。最近では、『ふるさと野菜おすそわけ』で知り合ったお年寄りに篠ファームで販売している京野菜を育ててもらって、僕が買い上げるっていうケースもあるし、人との繋がりの中でビジネスは新しい広がりを見せていきます。ふるさと野菜おすそわけは、今でこそ京都府だけですが、全国・世界にも通用するビジネスモデルやと思っています。例えば、曲がっていたり、傷があって、本来は捨ててしまう、商品にならない京野菜を熱加工して、貧困で苦しむアフリカに食料として届けることだって出来る。そういうこと考えてたら、わくわくしてくるんですよ。農業に携わる人、篠ファームに関わっている人、皆が幸せになるような仕組みをこれからも考えていきたいですね」。

地域と人を一番に考えて、農業をする。農業のアイディアマン・高田さんの挑戦は、まだまだ続きます。

メッセージ

有限会社篠ファーム
所在地 〒621-0008 京都府亀岡市馬路町狐瀬20-1
事業内容 農業及び、園芸の販売企画・生産・加工販売
有限会社篠ファームURL : 村上聡子プロフィール

編集後記 取材 ・村上聡子|Photo : 平塚写真事務所 ムクメテツヤ

 農業に関わる人が直面する問題を、経験とアイディアの力で解決に導いていく高田さん。実際に野菜を見ながら説明を受けていたのですが、メディアの力や販売の経路など、かなりの計算がそこには隠されていて、まさに「脳業」だなぁと思いました。
また、「ふるさと野菜おすそわけ」事業は、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に生活する人が少なかったり、地域のつながりが薄いといわれている中で野菜を通じて、あたたかいかかわり合いを感じることが出来る素敵なシステムだと思います。今回の取材で、限界集落の問題や、社会のありようについて、考えるきっかけを頂きました。

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