株式会社パラドックス・クリエイティブ

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「いいものをずっと大切に使う」 次の時代を予感させる価値観が、ここには25年も前からありました。

「愛されるブランドには、ストーリーがある。」世界トップクラスのある日本の二輪車メーカーも、毎日自転車で坂道をのぼる母親に楽をさせたいという、創業者の素朴な 思いからはじまったそうです。人々に愛されているブランドには、素直に共感できるこころざしあふれるストーリーが存在していることが多いものです。私たちパラドックス・クリエイティブが、経営者やプロジェクトリーダーなどの方々との理解を深めていく中で、「世の中に新しい価値を生み出してきた背景」をひもといていくと、そんな多くの共感できる話に出会います。

「CIBONE」「SFT」「Georgeヤs」「TMS」「ask a giraffe」「HOUSE」など、 ファーニチャーやインテリア、飲食事業を展開するウェルカムの経営者であり、「DEEN&DELUCA」を日本でも成功に導いたことでも知られるのが、横川さん。「すかいら〜く」を創業した横川家に生まれた彼が、どんな思いで事業を広げてきたのか、聞いてきました。

日本が昔から得意としてきた「編集力」で世界と日本をつなげて新しい文化を創っていく。その発信源になりたい。

鈴木:
「ふだんに、ふぜいを。」というコーポレートスローガンの策定をご一緒させていただきました。
横川:
父はファミリーレストランの文化を作りました。それがチェーン展開で全国に浸透することで、日本の食文化は確実に豊かになりました。昔はぜいたくだったグラタンも、今や数百円で食べられる。そんな時代を作ったのは、ファミリーレストランの功績が大きいと思うんです。
でも一方で、地方のロードサイド店に行くと、チェーン店が建ち並んで同じような風景になってしまった。そういう弊害もあるわけですね。その土地、その土地の「らしさ」があって、風情がある町並みを作りたい。その発信源が、自分たちの店舗でありたい。コーポレートスローガンは、そんな思いから生まれています。
鈴木:
自分たちが新しい文化を創っていく発信源になるべきではないか、という使命も見えてきましたよね。
横川:
コアにあるのは、編集力なんです。これをひもといた人物が、日本では松岡正剛さんという方で、日本人の神髄は編集の力にある、とおっしゃられているんですね。海外から何かを取り入れると、それを日本の編集力で再編集して新しいものに作り替えてしまう。そういうものは、文化しかり、食しかり、昔から本当にたくさんあったんです。
横川正紀

でも、その編集力も文明開化以来の欧化政策で編集なしにそのまま使ってしまう、ということが増えてややさびついているところがあった。今こそこの編集力を日本人は思い出すべきだと思っています。僕は高校時代をオーストラリアで過ごして、大学時代にアメリカやヨーロッパに何度も旅行し、会社に就職してからも海外に行き続けています。そこで見つけたものがたくさんあるし、これからも見つけていきたい。自分にとって新しいものを見ることは、新しい感動を作るための原動力になりますから。
そうやって海外のいい素材を見つけてくる。そして、それを日本で編集して新しい文化を創っていく。その発信源という存在意義があると思っているんです。

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街を作ってから、そこを歩く人を考えるんじゃなくて、人や店、道から考えて街を作っていこうと考えた。

鈴木:
いろんな事業を展開しておられるんですが、学生時代は建築を学ばれていたんですね。
横川:

スタイルのある暮らしとか、お洒落な暮らしに惹かれていたんですよね。海外に留学していたときにも、すごくそれを感じました。日本にも素敵な場所はあるんです。でも、ショップやレストラン、ホテルばかりでなくもっと家そのもの、暮らしそのものに、スタイルをもってお洒落にできるんじゃないかとぼんやり考えていました。
建築へは造形的アプローチから志願したんですが、次第に暮らし工学というか、人間工学的なものに興味がわきはじめました。それで都市計画や街づくりについて勉強したんですが、実現するには巨額の費用がかかる。大学を卒業した1996年はバブルも崩壊していて。でも、基本的に負けず嫌いなんです(笑)。できない、残念だ、にはしたくなかった。

鈴木猛之

 

 

何か風穴が見つかるんじゃないかと思って気づいたのが、街を作ってからそこに来る人々のことを考えるんじゃなくて、そこに住まう人のことを考えて、店があって軒を並べて道になって、その道が何本もつながって街になる。小さなものから大きなものを作っていくという考え方をすればいいのでは、と気づいたんです。
鈴木:
逆転の発想ですね。
横川:
街に統一感が出なくなるから全体計画みたいな話がよく出てくるんですが、実際にはそうはならない。多少つじつまが合わなくても、小さいところから足していくほうがもっと有機的ですごくいい街ができるんです。だからこそ、1軒の店の力というものを体験したいと思ったんですね。
鈴木:
それで、まずは家具や雑貨を取り扱うお店に勤めたんですね。
横川:
そうです。北米では800店舗くらいある大型チェーン店で、売り上げ規模も1000億円くらいあった「Pier1」の日本のFCビジネスでした。新しい生活スタイルを日本に提案しようとしたお店だったんですが、アメリカから来る商品がどれもこれもサイズが合わない、柄も合わない、クオリティも合わない、値段は安いんだけど、みたいな状況で。それで3年やって、事業そのものがうまくいかなくなってしまったんです。
 
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方程式より、鶴亀算。ひとつのパターンじゃなくてその場その場、その街その街、その人その人に合わせた“何か”に編集していく。

鈴木:
この事業の撤退を、転機になさったのですね。
横川:

全部撤退させるとむしろお金がかかる。だったらその分で何か再編集しませんか?とお願いしたんですね。事業再生を命題に、そのまま自分の会社として引き受けてしまった。振り返ってみても、なかなかのアイディアだったと思います。実は今ある「George‘s」や「CIBONE」のお店は、もともと「Pier1」だったところが多いんです。
最近やっと気がついたんですが、僕は何でもやりながら考えるんですよね。何かどこかにあるものをそのままやってみようというのは、ほとんどなくて。方程式が嫌いなタイプなんです。それじゃなくて鶴亀算が好き。鶴と亀がいれば、どんな方程式でも解けると思っているんです。ひとつのパターンじゃなくて、その場その場、その街その街、その人その人に合わせた何かで組み上げ直していろんなパターンを作る。編集と呼んでもいいと思いますが、それが得意だったんだと思います。

鈴木:
このときは、「George‘s」の名前の由来でもある天野譲滋さんが、まさにその編集のパートナーになるわけですね。
横川:
何しろ商品の企画力もなければ、仕入れのノウハウもない。それで、すでに家具のお店を持っていた彼に加わってもらうことにしたんです。最初はコンサルタントとして。2年目からは再生のめどが見えたので、以降は共同経営者として。
店舗写真
鈴木:
ここですごいと思うのは、普通は自分のお店を作るというと「横川ファニチュア」みたいにしがちじゃないですか。でも、「George‘s」でお店を作られていく。会社名も当初「ジョージズファニチュア」でしたよね。
横川:

すでに「George‘s」という素晴らしい店の名前があったから、そこに意識はなかったですね。素直にそれを広めていこうと思いました。実際、調子が良くて2005年からは出店が加速していきましたから。今は全国で30店舗あります。

鈴木:
でも、次は違う業態の「CIBONE」を展開していかれます。これは、どういう経緯だったんですか。
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企画が先ではなくて問題が先、ということも多い。問題はチャンス。それをなんとかしようとしているうちに新しいアイディアにつながったりする。

横川:

受け継いだうち、青山と自由が丘は、立地が都心部であり、近隣に商品がバッティングするから「George‘s」では出せないということになってしまって。実は僕の場合は、企画が先ではなくて問題が先ということも多いんです。その問題を乗り越えるためにどうするかを企画に切り替えていくんですね。だから、問題はチャンスなんです。それをなんとかしようとしているうちに新しいアイディアが出てきたりするんです。
もう少しファッション性を高くしよう、イベント性を取り入れてギャラリーみたいなことをしよう、デザイン業界をリード出来るような店にしよう…。こういう考え方もそういうところから出てきた話で。今までの雑貨屋とは違うものにしたかったし、何より業界の垣根を超えたかったんですね。飲食店を併設させたのものその理由。カエルの子はカエルといいますか、飲食店なら何かできる気がしたんです。アルバイトの経験も含めて、たくさんのお店を見ていましたし、おいしいものが好きだったこともあって。ヨーロッパでは、インテリアショップの横にカフェが壁もなく併設しているのはよくあるんですよ。それで京都でまず作ったのが「ask a giraffe」だったんです。これが「CIBONE」に進化していった。

鈴木:
カフェ併設のインテリアショップの走りですよね。これが大ヒットすることになって。ギャラリーに注目されて、国立新美術館のミュージアムショップもなさって。
横川:
いろいろやっていますけど結局、面白いとかお洒落とか生活が気持ち良くなるというのが、すべての原点なんです。もっというと、女の子にモテるか(笑)。「今、オレが言っていることって面白い?」っていう感覚はいつもありますね。

面白いと思っている人がいないということは、その話は儲からない話だと思います。「DEAN&DELUCA」にしても、「海外にあるスーパーマーケットってすごくかっこいいよね。ああいうものが日本にあったらいいと思わない?」から始まっているんです。実際「いいよね」という声がたくさんあって。

鈴木:
ただ、「DEAN&DELUCA」も、当初はずいぶん苦労されたとお聞きしていました。
横川:
もともとニューヨークでよく見ていて、自分もすごく好きなお店でした。でも、アメリカと日本ではやっぱり違うんですね。3年くらいはまったくうまくいかなくてずっと赤字が続いていたんです。
DEAN&DELUCA
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「DEAN&DELUCAの創業オーナーにこう言われた。どうして、おそばがないんだい?どうして、お米のメニューがないんだい?

鈴木:
何か転機がおありになったんですか。
横川:

あまりに行き詰った時、「DEAN&DELUCA」の創業オーナーに会いに行ったんです。アメリカの店に負けないくらい頑張っているのに、うまくいかないんだと。すると彼がまるで兄貴みたいに話をしてくれて。自分たちは本当においしいと思うものを素直に伝えたくて、真っ直ぐに伝えただけなんだ。日本にはおいしいものがたくさんあるんだろ。でも、どうしておそばがないんだい?お米がないんだ? もっと日本のお客さんや食文化と向かい合ってごらん。アメリカをコピーするんじゃなくて、「DEAN&DELUCA」の考え方をもっと学んでごらん。私たちのルーツは、作り手が自らその良さを伝えながら売る「マーケット=市場」だよと。
素晴らしい生産者から素晴らしい食材を都市部に取り寄せて1本の道にするというのが実は彼らの原点だったんです。この後2年間、中心社員でヨーロッパを巡り、素晴らしい生産者にたくさん会って、生活スタイルや文化を知って、それを日本の食文化にどうなじませるか、それこそ編集し直したんですね。これでお店がすごく良くなったんです。

鈴木・横川
鈴木:
いろいろな事業を展開されていますが、これも同じ考え方だとおっしゃられていましたね。
横川:

ファニチャーやインテリアショップのチーム、またレストランチーム、さらに「DEAN&DELUCA」チームが今はあって、これからもっとチームが増えるかもしれませんが、それぞれの会社が専門性をしっかり持ちながらも、1本の道に連なっていくように会社を展開していくことが大事だと思っています。そして横軸でノウハウ、ナレッジシェアをしていく。こうやって、グループ全体として日本のライフスタイルを盛り上げていけるような街を元気にできるようなそういうグループになりたいと思っています。こだわっているのは、日常です。普段に風情を、毎日に味わいある暮らしを。風情ある町並みを。これがすべて原点ですね。

鈴木:
いろんなことがこれからできそうですね。
横川:

うれしいことに、面白い商材やサービス、メニューを持っている、面白いビジネスをやっている友だちがまわりにはたくさんいます。彼らと一緒に何かできないかな、と思っていたりもします。
それこそ、この商材は限定店舗でしか扱わないなんてことを考える時代ではもうないですね。ネットで何でも買えるわけですし。その意味では、これからのキーワードはシェアかもしれません。なんでもシェアする。商品も、アイディアも。そうすると、新しい編集が生まれて、みんなでウィンウィンに近づけると思うんです。

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