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2018.05.28REPORT

深澤了さんに書籍『「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる 採用ブランディング』に込められた思いを伺いました。

「無名×中小企業」でも
ほしい人材を獲得できる採用ブランディング

2018年1月、
『「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる 採用ブランディング』
を出された深澤さんは、実は元パラドックスの社員(現・むすび株式会社 代表)。
ブランディングのスペシャリストとして長く活躍されてきた深澤さんは、
なぜこのタイミングで本を書かれたのか。込められた想いを伺いました。

(この鼎談は2018年4月におこなわれました)

ブランディングを、世の中のインフラレベルに普及していきたい。

--:
今回は出版おめでとうございます。この本を書くことになった経緯から伺いたいのですが。

深澤:
そうですね。「ブランディングをインフラ化したい」という思いがずっとありまして。企業にとって、ブランディングをもっと当たり前のものにしていきたいんです。その啓蒙活動の1つとして今回、本を書かせてもらいました。

--:
「ブランディングをインフラ化する」って、大きな話ですね。

深澤:
会社をつくると、みんな「税理士探そう」ってなりますよね?それと同じくらいの感覚で、「ブランディングしよう」ってなったらいいなと思っていて。経理や財務みたいに、当たり前にブランディングがある世界を実現したいんです。

--:
そう考えるようになったのはいつ頃ですか?

深澤:
パラドックスで求人広告をめちゃくちゃ作ってた時代ですかね(笑)。「無名だけどすごくいい会社」の良さをどうやって世の中に伝えようかみんな考えていたじゃないですか。ただ「月給いくら」「残業何時間」と書くだけでは、何も伝わらないんですよね。だからパラドックスでは、「どうすればこの会社の魅力を伝えられるか」を徹底的に考えて、世の中と握手するための切り口を探していたわけです。あれは求人原稿作成というより、もはやブランディングですよね。

--:
確かにそうなんですよね。

深澤:
募集要項を聞いて、それをただ文字に起こすだけじゃない。理念とかビジョンとか、そういうところから理解して、その会社の魅力や想いをどう伝えていくか、を深く深く考える。これはまさにブランディングです。だから僕らにとっては、「採用ブランディング」ってごくごく当たり前のことなんですよ。

--:
でも、世の中の人はそう思ってないんじゃないですか?

深澤:
そうなんです。ブランディング自体、敷居が高いものだと思われてますし、特に「採用」にブランディングを取り入れている会社は、まだまだ少ないですね。でも採用ブランディングというのは、会社の理念やビジョン、あるいは他社にない強みなどを明確化する作業ですから、ここをキチンとやれば、採用だけじゃなく業績にもいい影響が出てくる。だから、やった方がいいというより、当たり前にやるべきものなんですよね。

--:
なるほど、それで「ブランディングのインフラ化」なんですね。

深澤:
そうです。企業ブランディングや商品ブランディングに比べると、採用ブランディングは比較的手を付けやすいですし、それを入り口にして企業ブランディングへと繋げていくこともできる。勉強会でも「ブランディングするなら採用から」とよく言います。効果もすぐ出ますしね。

--:
効果と言うと、いつもは何を設定しています?人数ですか?

深澤:
それもひとつなんですが、それだけで判断するのは危険です。採用人数を基準にすると、結局、母集団を何人集められたのか、という話になってしまう。昨年より多かったから成功、少なかったから失敗、という短絡的な評価になりやすいのです。それよりも、「どれくらい理念が伝わったか」ということを指標として置くべきだと思いますね。

--:
「どれくらい理念が伝わったか」はどのように評価しているんですか?

深澤:
以前「会社への愛着度」についての調査をしたことがあります。そうしたら、理念共感して入ってきた人とそうじゃない人とで、倍くらいの差が出ました。当然、理念共感して入ってきた人の方が、ずっと愛着度が高いわけです。そして同じ対象に「この会社で自分を活かせるイメージが持てるか」という質問をしてみました。

--:
それは、本人に?

深澤:
そうです、本人に。そうしたら、理念共感して入った人の半分以上が「活躍するイメージが持てる」と答えたのに対し、理念共感してない人たちは、その半分以下だった。調査をしてみれば、ちゃんとこういう結果が出るわけです。会社はよく「活躍してくれる人材を採用したい」と言いますが、「そのためには理念共感が重要ですよ」ということを私は言いたいのです。

--:
最近では会社の定義も変わりつつあります。副業解禁とか、出社義務なしとか、何社か掛け持ちして勤務する、というようなことが可能になってきました。こういう世の中だと、会社への愛着度はさらに重要になってくる気もしますね。

深澤:
というより、もはや「愛着のない会社には所属する意味がない」という時代になってくるはずです。そしていまお話ししたように、愛着度には理念共感が深く関わっています。

--:
なるほど。会社の定義が「理念共感している1つの集団」になっていくと。

深澤:
なっていくでしょうね。というより、ならなければいけません。だからこそ、採用ブランディングが必要なんです。

ブランディングの普及。この本を出版した大きな理由の一つです。

--:
今回、採用ブランディングの本を出版されたことで、どんな反響がありましたか?

▲深澤さんが2018年1月に出版された書籍、『「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる 採用ブランディング』
▲深澤さんが2018年1月に出版された書籍、『「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる 採用ブランディング』

深澤:
地方からの問い合わせは増えましたね。九州で飲食業をやっている会社さんとか、長野の税理士法人さんとか。タイトルの『「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる』の「無名」ってところに皆さん惹かれるみたいです。大手企業の方からの問い合わせもないわけではありませんが、大手というのは知名度だけである程度人は集められる。そういう意味では、地方の無名な企業さんの方が真剣に採用ブランディングを考えていますよね。

--:
中小企業の方の力になってあげたいという思いがあるんですね。

深澤:
採用ブランディングは無名の中小企業が、大手に対しても、ジャイアントキリングもできる数少ないチャンスでもあると考えています。もちろん、大手も 取り組めればもっと強くなるんですけど。一番効果があるのは、タイトル通り「無名×中小企業」なんだと思います。

--:
採用ブランディングに取り組む際に、母集団の減少を気にされるケースってありますか?

深澤:
様々な部分を明確化するので、対象となる人がそもそも少なくなってしまう、という可能性はもちろんあります。ただ、採用の精度はそのぶん上がるはずです。

--:
なるほど。それが母集団の人数ではなく、理念共感度で評価する、という話なのですね。

深澤:
そうです。そして、理念共感した人を採用することで、会社全体の一貫性がさらに高まっていく。ブランディングは、あくまで手段です。採用ブランディングを通じて会社の魅力を徹底的に引き出し、それを発信することで、いい人材が入ってきてくれたり、その会社の業績が伸びたりするわけで。

--:
採用ブランディングがいろいろなことのキッカケになっていくわけですね。

深澤:
よく「ブランディングというものを一言で表すと?」というようなことを聞かれるんですけど、私は「ファンづくり」と答えます。ファンがたくさんいる会社は、人の採用も業績もうまくいきますから。その一方で、ブランディングをもう少しアカデミックな側面から研究していきたい、という欲もあって。「ファンづくり」と言うとフランクな印象ですが、あくまで普遍的なブランド理論に則った内容でなければならない。ブランド論と言えばアーカー(David A. Aaker)とかケラー(Kevin. L. Keller)が作ったものですが、「この理論をこう応用するからこういう結果が出るんだ」というロジックを忘れたくない、というか。

--:
普遍的なブランド理論、ですか。

 深澤:
ブランド理論ってまだこの30年くらいのもので、経済学とか経営学に比べたら全然歴史が浅いわけです。だからこそ、学問的にそれを理解しておくことは重要だと思っています。理論をきちんと学んだ上で、さらに研究を進めていきたいということですね。

--:
アカデミックな話ですね(笑)。

深澤:
そうなんです(笑)。私、けっこう学者タイプなのかもしれません。真理が知りたいというかね。だからパラドックス時代に大学院に通っていたでしょう?(※)そこで論文も書きました。今までの商品ブランディングと企業ブランディングに加えて、採用ブランディングというもう一つの軸があって、その3つがうまく作用しながら企業の業績が上がっていくんだ、というまさにパラドックスでやっていた仕事ですよね。
(※深澤さんはパラドックス在籍時、経営を学ぶためビジネススクールに通っていました。)

--:
実際の仕事と大学院の学びが、かなりリンクしていたわけですね?

深澤:
よくあるブランディングの事例ばかりを紹介する教科書には、少し違和感を覚えましたね。デザインとか売上とか結果ばかりを書いている。そうじゃなくて、そこに至るまでの過程というか、ブランディングの考え方それ自体をもっと伝えていくべきなんです。ビジョンやミッションや理念をどうやって紐解いていくのか、どういう論に則ってそれを進めるのか、という部分こそが重要なのに。

--:
確かに事例紹介に終始している本は多いですね。

深澤:
そうなんですよ。だから私は「ブランドシンキング(BRAND THINKING)」っていうWebメディアも立ち上げて、ちゃんとしたブランド論の啓蒙に力を入れています。メディア立ち上げから1年くらいは週2〜3回コンテンツを追加してまして、本当に大変だったんですけど(笑)。

--:
ブランドをインフラ化すると同時に、正しいブランド論も啓蒙していく、ということですね。

深澤:
その通りです。私なんて微力なんですけど、本当に微力なんだけど、でも少しずつ、やれる範囲のことをキチンとやっていきたいなと。最近では「ブランド経営学会」を作ろうというような話も出ているんですよ。徐々に勉強会を開いていって、ゆくゆくは一般社団法人にしよう、とか。そこに所属して勉強する人が増えれば、ブランドに関する知識がもっと広まって、結果、「インフラ化」にも繋がっていく。そうやって少しずつ、土壌を作っていこうとしています。

--:
すごい複合的な動きをされているんですね。お話を聞いて、ブランディングのインフラ化向け着実に歩みを進めているのがわかります。パラドックスも微力ながら応援しております!

深澤:
ありがとう。ちょっとずつね。ちょっとずつなんだけど進めて行きます!(笑)

--:
今日は素敵な話をありがとうございました。

深澤:
ありがとうございました。

(おわります)

2018.5.25

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