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# 011

ものづくりを通じて、こころをひと押しするシーンをつくる。

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印鑑屋から、「こころをひと押し」企業へ。親子の絆をひと押しする、新商品開発。

サンビー株式会社は、長年印鑑の製造や販売を行なってきた老舗企業。3月15日に創業100周年を迎え、その記念として自社開発した新商品「みちてらす」のリリースが行なわれました。実はその約1年半前、改めて自社の存在意義・使命を見つめ直す理念策定を実施。そして、理念の体現の一つとして新商品開発へと挑みました。印鑑廃止論も提唱されるなど逆風が吹く業界の中で、どのような想いで新商品を生み出したのか。同社の代表取締役社長・山本忠利氏にお話を伺いました。

100周年を前に迎えた「印鑑廃止」の波と転機。

サンビーは、1921年に印材製造業として奈良市で創業しました。昭和の時代には、回転印、浸透印(朱肉なしでも押せるスタンプ)をはじめとする数々のアイディアヒット商品を生み出し、時代を切り拓いてきました。現在も、全国各地の印章店・文具店・量販店などを通して、サンビー商品が日本中で使用されています。しかし一方で、近年はオンライン化・ペーパーレス化が急速に進み、各所で印鑑廃止論が叫ばれるようになりました。サンビーの現・代表取締役社長(当時は専務取締役)の山本忠利氏は、こう語ります。

「印鑑の需要が減っていく中で、サンビーはこれから何を強みとし、どこに向かっていくべきなのか。改めて、自分たちの『使命』は何なのかを明確にする必要があると考え、理念策定プロジェクトを開始しました。」

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理念策定プロジェクト、名付けて「ASITA PROJECT」には、山本氏を中心に複数名の役員や社員が参加。OBの方にもご協力いただき、歴史を紐解いていくなかで、サンビーは今までずっと「人の気持ち」を何より中心に考え、商品開発や事業を行なってきたことがわかりました。また、便利になった現代でも、人々の間で誤解やすれ違いは起き続けていることに対する課題意識から、サンビーのミッションは「モノづくりを通じて、気持ちをひと押しする シーンをつくる。」に決定。新しいスローガンは「こころをひと押し」になりました。

印鑑屋から「こころをひと押し」企業になるために。

理念は、言葉として掲げるだけでなく、実行していくことが最も大切です。そこで、2020年8月、サンビーの理念「こころをひと押し」を体現する象徴商品の開発をはじめました。その難しさについて、山本氏はこう語ります。「どちらかというと自社の技術力を起点にした事務用の“シーズ発想”で商品開発を行なってきた会社です。なので、使い手である一般消費者のニーズとなるシーンを想像し、どんな商品であれば喜んでもらえるのか、“顧客の体験価値” を中心に考え企画していくことも、慣れない経験でした。」

使い手のシーンを知るために、プロジェクトメンバーのご家族や知人など、何人にもヒアリングを実施。様々な意見を聞くうちに、今後、日々の事務的な印鑑の需要は減っていくかもしれませんが、人生の大切な節目で使用する一生に一本の実印については、まだまだ可能性が秘められているのではないかという仮説にたどり着きました。また、印鑑が必要になるのは、一人暮らしをはじめたり、新社会人になって「ひとり立ち」をするタイミング。その時に、我が子を送り出す親が、想いを込めて子どもの人生を「ひと押し」できるような印鑑をつくれないか。そんなアイディアが出てきました。

「プロジェクトメンバーが、私も含めて全員『父親』だったので、リアルに考えることができました。普段は恥ずかしくてなかなか伝えられない子どもに対する想いが、印鑑を贈ることで、さりげなく伝わるといいなと思ったのです。そうすれば、父親の気持ちも子どもの人生も『ひと押し』できると思いました。」

親が子の幸せを願い、様々な想いを込めてつけた「名前」。その「名前」が刻まれた実印を、新たな門出のタイミングで贈ることで、その先の人生の多幸を願う。そんな商品コンセプトが決定しました。さらに、「贈り物」にふさわしい印鑑にするため、材料選びからネーミング、ロゴデザイン、印鑑のフォルムやケース、外箱まで、一貫したストーリー性にこだわり検討していきました。3月24日のリリース日が迫るなか、ぎりぎりまで商品のブラッシュアップが続けられ、ついに受注開始の日を迎えることができました。

印鑑屋から「こころをひと押し」企業になるために。の画像

「こころをひと押し」しつづける企業として。

商品が決定し、先行予約が開始されましたが、実際にお客様に届くのはもう数ヶ月先のこと。ここからが正念場になります。「今回は、サンビーの原点に戻り、改めて『心のつながりをつくる』という『シーンづくり』ができたのではと思います。ですが、初めての挑戦なので、期待と不安、どちらもあります。お客様からの反響をしっかり今後のプロジェクトに還元していきたいです。」

さらに、挑戦は今回の「みちてらす」だけにとどまりません。サンビーとして「こころをひと押し」ができる新しい市場の開拓、既存の枠を超えた新規事業・新商品開発に、今後も挑戦を続けていきます。今後について、山本氏はこう語ります。「サンビーという会社を大きくしていきたいというより、皆が誇りを持って働ける会社にしていきたいです。何より、社内の仲間にも、世の中の一人ひとりにも、優しいサンビーでありたい。事業を通して、こころとこころがつながり通じあう豊かな人生に、少しでも貢献できたらと思います。」

「こころをひと押し」しつづける企業として。の画像

・みちてらす 商品HPはこちらから
・新商品の開発秘話詳細(PR TIMES STORY)はこちらから

あとがき

昨今、今までの常識や市場のニーズが急速に変わりつつある業界は多いのではないでしょうか。サンビー様は、揺れ動く印章業界の中で、改めて自社の存在意義・使命を見つめ直す理念開発を行なわれました。自社の存在意義・使命が明確になると、これからどのような商品をつくり、事業を展開していくべきかも変わってきます。サンビー様の場合は、そのひとつの形が今回の新商品「みちてらす」でした。100周年という節目で、新たな一歩を踏み出すところに関わらせていただくことができ、非常に光栄です。サンビー様の未来への進化にお役に立てるよう、これからも微力ながら、弊社一同尽力していきたいと思います。

(担当ディレクター:嘉藤)

サンビー株式会社:https://www.sanby.co.jp/index.html