こころざしストーリーズ

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株式会社 プラン ドゥ シー 代表 野田 豊加
株式会社 湘南ベルマーレ
鮨かねさか
こころざしストーリーズ 第二回 株式会社 湘南ベルマーレ
つないだ人 つないだ人
つなげる人 つなげる人
全力で攻め続けるサッカーが
人に夢や感動を与えるように、
本質的なスタイルを忘れずにいたい。

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小さな市民クラブとして再発足して15年。
チームの強化に取り組み始めて10年。
ようやく今が、スタートライン。

2014年J2優勝、そしてJ1昇格、おめでとうございます。今の大倉さんのお気持ちを聞かせてください。

 チームとしては1993年から1999年まで、中田英寿など多くの日本代表を擁していた時代があって、しかし1999年に親会社の撤退があったわけです。そこからはちっちゃな市民クラブとして再発足して、いろいろな苦難の時代がありました。私が強化部長というチーム作りの責任者としてベルマーレに携わるようになったのは2005年からです。チームとして大切にしたいこと、目指すサッカーってどういうことだっけ、という軸づくりから取り組んできました。徐々にチームは強くなり、湘南ベルマーレとして初めてJ1昇格を果たしたのが2009年でした。これは大きな出来事でした。それから降格、昇格を繰り返してきたわけですが、だんだんと今、J1でやっていく力が安定してきました。昔を知っている人から見たら、ベルマーレがまた復活してきた、という感じじゃないでしょうか。再びJ1の舞台でやれることにワクワクしています。ようやくスタートラインという感じです。

世代と地域をつなぐ総合型地域スポーツクラブとして、チャレンジする人の成長を支え、夢と感動を提供する。

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「勝ち点3」だけを成果とせず、
プロセスで感動や勇気を与えるチームになろう。
横パスより、縦パスを。

大倉さんが続けてこられたチームづくりとは、どのようなものだったのですか。

 ほんとちっちゃな市民クラブで、株主の約7割が市民の方です。地域の方たちに存続の危機を支えられてきたチームとして、どう成長していくべきか。私がメンバーに言い続けてきたのは、プロの世界は勝ち点3が成果だと言われるけれど、うちはそれだけを目指すチームじゃないということ。勝ち点3をとるためのプロセスで、応援してくれる地域の方たちを楽しませたり感動させたり、明日からまた頑張ろうという勇気を与えたり、そういう無形のサービスを提供することを大事にしようと。その先に勝ち点3はあるんじゃないかなと。たとえば、リードしたからといって勝ち点3を守るため横パスをまわしだしたら、サッカーがつまらなくなってしまう。縦パスを積極的に使うことを徹底させて、ハードなときも常に攻めの姿勢で、観に来てくれている方たちに感動や勇気を与えようとこだわってきました。試合も全部勝てるわけがない。だったら、負けるときだって、どう負けるかを大事にしようと。そういう方針を言い続けてきました。2005年頃は一試合のお客様が3,000人ほどだったのが、今はJ2でも平均8,500人くらいは来ていただけるようになりました。ベルマーレのサッカースクールは、今や2,000人くらい小学生がいます。湘南ベルマーレのスタイルがだんだん認知されてきたかなと嬉しく感じています。

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トッププロからレジャースポーツまで。
総合型地域スポーツクラブとして。

今はサッカーだけでなく、ビーチバレー、トライアスロン、フットサル、サイクル ロード、7人制ラグビーと、湘南ベルマーレは様々なスポーツを楽しむ総合型クラブへ発展しています。運営も、株式会社とNPOの2法人で行っているんですね。

 もともとは、99年の親会社の撤退のとき、子どもたちのサッカースクールまでなくなりそうになったんです。どんなときも子どもたちのサッカーは残せるようにと、ヨーロッパに多いやり方に倣ってNPO法人を別につくったのが始まり。今はサッカーのトップチームとU18の運営は株式会社で、子どもたちのサッカーやそれ以外のスポーツはNPOが運営しています。NPOは行政との相互関係もつくりやすく、非常にうまく機能しています。
サッカー以外でも、トライアスロンチームが海での泳ぎ方スクールを毎週開催したり、サイクルロードのチームが自転車の載り方教室を開いたりと、地元との関わりは増えています。あるいは、サッカーチームのトレーナーたちが地域の人に施術を提供しようと鍼灸整骨院を開いていたりと、地元との関わりも多様になってきています。
クラブの運営に携わる人も増えてきた今、ベルマーレファミリーとしてのまとまりをあらためて確かめようと、最近、ミッションステートメントをまとめました。ミッションは「夢づくり 人づくり」。サッカーでもビーチバレーでも、協賛金を募るときもプロの選手の獲得のときも、みんなでこの想いを語っていきたい。

広がってきた、愛すべき
“ベルマーレファミリー”。

今日もクラブのオフィス近くのグラウンドは子どもたちでいっぱいです。お父さんお母さんも集まっています。

 子どもたちがいることで、本当に地域のスポーツクラブは求心力を持ちますね。キラキラしている子どもたちを見るのが、私自身、何よりの喜びです。サッカースクールに来る子どもたちも、トップチームの試合を観に来てくれるサポーターの皆さんも、他のスポーツに取り組む地域の方たちも、スポンサー企業の方も、みんな愛すべきベルマーレファミリー。総合すると、たぶん数万人になると思います。このファミリーをもっと増やしながら、お互いにとって恩恵があるような関わりをつくっていきたい。このつながりを、もっとパワーに変えていきたいと思っています。

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「たのしめてるか。」
原点を忘れず、次の10年へ。

多くの人にベルマーレの活動に参加してもらうために大事にしていることは?

人を楽しませることができているか、そのためにも自分たちが楽しめているかが大事。原点はそこだと思います。感動とか夢とか希望を提供しようっていうのが我々の本分なんだから、やるほうが楽しめていなければいけない。楽しめているからこそ、今、こういうふうに輪が広がってきているんだろうなと思います。だから湘南ベルマーレの新しいスローガンは「たのしめてるか。」という言葉にしたんです。この原点を常に忘れないようにすることを大事にしたい。スポーツビジネスは生もので、ふつうの企業経営より難しいとよく言われますが、私はそれを言い訳にはしたくない。目標を持ち、達成を目指しながら、自分たちの使命を忘れずにやっていきます。今がやっとスタートライン。次の10年の挑戦をはじめます。

人生と地域を豊かにするスポーツ文化、それが根ざしている世の中づくりという大きなビジョンを見定めて、クラブ一丸、地域一丸となって動きだしているベルマーレ。まだまだ道半ばと、地元の7市3町を忙しく動き回る大倉さん。地域経済の活性、子どもたちの成長、市民の健康への貢献、働く場所づくり……、地域の人々のたくさんの想いを託されて、湘南ベルマーレというこころざしは、さらに熱く、強くなる。